歯周病

歯周病ってなに?

私達の歯は歯周組織と呼ばれる歯肉、歯根膜、歯槽骨、セメント質の4つの組織によって顎の骨とがっちりと結合しています。そして、この歯周組織を侵す病気を歯周病といい、歯肉炎と歯周炎とに分類されます。
歯肉炎は歯肉に限局した炎症で、プラーク(歯垢)が付着したままの状態では2~3日で発症し始めます。2週間も経つと完全な歯肉炎となって歯肉が腫脹し、出血もします。しかし、歯肉炎であればこの段階でプラークを取り除けば歯肉はまた元の健康な状態に戻ることができます。
歯周炎は歯肉炎がさらに悪化することによって引き起こされる病気で、歯肉以外の歯周組織の破壊が起こり、一度壊された歯周組織は、元通りに回復することが出来ません。歯周組織に対する再生療法もありますが、条件が合わないと良い結果が得られないのが現状です。したがって、歯周炎の治療では、破壊によって減少した歯周組織を、その状態において健全な歯肉に戻すことを、目標とすることになります。


歯周病の原因

歯周病の原因は、プラーク(歯垢)です。プラークは、単なる食べかすではなく、実は細菌の塊なのです。プラークは、1mg中に10億個、300種類もの細菌を含んでいて、その中の一部の細菌による複合感染が原因で歯周病が起こります。
バイオフィルムとしてのプラーク
「バイオフィルム」聞き慣れないことばですが、私たちの身近な所では、台所の流しの排水口などでよく見られるヌルヌルとした汚れがバイオフィルムです。バイオフィルムは何種類もの細菌が、粘着性のあるヌルヌルとした蛋白質ポリマーによってマトリックスを作っている状態で、プラークもまさにバイオフィルムそのものなのです。一旦バイオフィルムを形成した細菌は、単独の時とは比べ物にならないほどの威力を発揮し、抗菌剤に対しても強い抵抗性をもち、どんな環境下でも適応するようになります。したがって、歯周病を薬剤のみで治療することは不可能で、やはり歯ブラシによるプラークの器械的除去が最優先されなくてはなりません。


プラーク以外の関係因子

歯周病の原因がプラークにあることは前述のとおりですが、それ以外にもいろんな因子が関係して歯周病を引き起こします。全身的な因子としては、妊娠などによるホルモンのバランスの変化や、風邪などの消耗性疾患、糖尿病、ストレス、栄養不良などによる免疫力の低下によって歯肉の炎症が強く出やすくなります。また、局所的因子として食物の性状、口呼吸、不良補綴物(適合の良くないクラウン等)の存在、歯列不正、深い歯周ポケットの存在などがプラークコントロールを難しくする原因と考えられます。


歯周病の治療(予防)

歯周病に対する治療を一言で言い表すと「徹底したプラークコントロール」に尽きるでしょう。プラークを取り除くことで、口腔内の細菌の数を一定レベルまで減らしさえすれば歯周病は起こらないのです。そのためには、現在のブラッシング効果の評価と、より自分にあったブラッシングの指導をしてもらう必要があります。歯科医院では、スケーリング(歯石の除去)や場合によっては歯周外科手術を行いますが、これは、あくまで患者さんがプラークコントロールしやすい環境を創るための手助けであって、歯周病治療の本筋がプラークコントロール(ブラッシング)にあることを忘れないで下さい。歯周病は自分自身が治療することが出来る病気であり、主治医はあなた自身でなくてはなりません。