日頃のケア

今回は“日頃のお口のケア”についてと、“もっとおしゃれに歯科医と接する”をテーマにお話いたしましょう。

「お口のケアをどのようにしていますか?」という質問をするとほとんどの人が「私は歯磨きをしています。」と答えるでしょう。そこで「それ以外には?」と聞くと、今度はほとんどの人が考え込んでしまいます。歯磨きをしているだけで、虫歯や歯周病にならないですむと考えている人がいるとしたら、その人は、テレビコマーシャルの見すぎか、はたまたよほどのオプティミストなのではないでしょうか。また、自分ひとりの力で完璧なプラークコントロールができている人がいるとすれば、きっとその人は総入れ歯のはずです。

 虫歯や歯周病の予防に、歯磨きをしてプラークコントロールすることは大事なことなのですが、もっと大事なのはあなたのお口がきちんとプラークコントロールされているか否かを、定期的に歯科医にチェックしてもらうことなのです。歯磨きによって完璧なプラークコントロールができるのであれば、それは確かにすばらしいことですし、理想だと思います。我々歯科医のもとに歯痛を訴えて来る患者さんも少なくなることでしょう。しかし、実際にはまだまだ多くの方が、何かしら自覚症状をもって来院します。本来、自覚症状が現れてからでは時既に遅しで、そうなってしまった人は、そこまでケアを怠った自分自身を責めるべきではないでしょうか。転ばぬ先の杖とはよく言ったもので、日頃の定期的な歯科健診は、まさにあなた自身の転ばぬ先の杖なのです。

 さて、これまでに3度もプラークコントロールという言葉を繰り返し使いましたから、嫌が王にも頭の片隅にインプットされていると確信いたしまして、もう少し詳しくお話しいたします。私が患者さん自身によるプラークコントロールを否定し、それに対して悲観的な考えを持っていると勘違いされたくはないですからね。

 そもそもプラーク(歯垢)とは、歯の表面に付着している白っぽいねばねばした堆積のことです。食べ物の残りかすを栄養とする微生物とその代謝産物から成り、長期間たつと歯石になります。虫歯や歯周病の原因になるばかりではなく、口臭の原因となります。プラークコントロールとは、お口の中のプラークをなるべく少ない状態に抑制、管理することだと理解してください。通常我々歯科医が目標としている患者さん自身によるプラークコントロールの程度は、その患者さんの残存する歯の全歯面に対してプラーク付着率が20%以下となるような歯磨きをしてもらうことであり、裏を返せば歯面の80%以上が磨けているのなら、とりあえず合格点ということなのです。

 歯科医院で歯磨き指導を受けたことがあればお分かりでしょうが、なかなかどうして、ここまで磨きこむのは大変なことで、まして、食事の度にこの状態をキープするような歯磨きは、たぶん、私にだって不可能だと思います。ですから、残り十数%のリスク管理を定期検診でカバーして欲しいのです。そして、定期検診の時期は、患者さん一人一人みな違ってくることを理解してください。プラークコントロールが95%できている人と、がんばっても70%ぐらいしかできない人では、後者の方が頻繁に検診を受ける必要があるのは当然だとはおもいませんか?また、そうすることで自分の歯が守れるのなら、けっして無駄にはならないはずです。

 さて、定期検診の重要さもわかっていただけたことですし、この辺で一つ新しい言葉をご紹介しましょう。

PMTC (Professional Mechanical Tooth Cleaning)


 言葉の示す通り、専門家(歯科医師もしくは歯科衛生士)によって行われる器械的なクリーニングのことで、普段のプラークコントロールだけでは十分にケアしきれない歯石やプラーク・着色等を徹底的に取り除くための方法です。そのやり方は、各歯科医院によってもさまざまですが、お口の中が見違えるほどきれいになります。
最後になりますが、美容院やエステに行くことが、自分のためであり、相手のためでもあるように、“私は、月に一度は○○デンタルクリニックにPMTCをしに行くよ。”と胸を張って人に言えたら素敵だとは思いませんか?